故人の遺骨をお墓に埋葬する気持ちの整理がつかなかったり、納骨先を悩んだりして、その結果、納骨しないで家に置くことを選択する人もいるでしょう。
しかし、長期的に考えると、自分がやがて遺骨を管理できなくなった時にどうするかという心配も出てきます。
ここでは、納骨しないで家に置く場合のペナルティはあるのか、またその後の遺骨の供養のためにできることをご紹介します。
目次
納骨しないで遺骨を家に置くことはできるの?
遺骨は、必ずお墓に埋葬しなければならないと思い込んでいる人もいますが、実は違います。
納骨せずに自宅に置くことや、置き続けることは、法律的に問題なく、きちんと管理されていれば罪に問われることはありません。
一般的な納骨のタイミング
納骨せずに自宅で供養し続けることもできますが、多くの場合、四十九日や百箇日、一周忌、三回忌といったタイミングで納骨する方が多いです。新しくお墓を購入する場合は四十九日の法要には間に合わないことが多いため、それ以降になるケースも多々あります。
百箇日は、悲しみに浸る日々から次のステップへとうつる、遺族にとっても重要な意味を持つ法要です。そして一周忌は喪が明けるという大事なタイミングであり、気持ちの整理をして遺骨を納骨するのが通例でしょう。
必ずしも、これらのタイミングで納骨する必要はありませんが、遺骨の管理を考えるといずれは自宅以外の場所に納骨する必要も出てきます。自分が病気になって家で暮らすことができなくなった時や、突然命に関わる事態が起こった時に、誰かに遺骨の管理を託すのは、あまり現実的ではないでしょう。そのため、急ぐ必要はありませんが、納骨先については決めておくことが大切です。
勝手に庭などに埋葬するのは違法
いくら納骨に期限がなくて自宅でも保管できるとはいえ、庭などに埋めるのは違法です。日本の法律では、遺骨は定められた場所でしか納めることができません。これを破ると罪に問われますので、くれぐれも注意しましょう。
納骨せず自宅で供養する方法
それでは、お墓や納骨堂などに納骨せずに、自宅に遺骨を置き供養する方法について確認していきましょう。
具体例をいくつかあげて解説します。
骨壺ごと安置する
仏壇に骨壺を置いたり、骨壺の置けるスペースを設けたりして、安置します。お墓の購入費用や納骨堂の管理料などを支払う必要がないため、金銭面での負担は少ないでしょう。最近は、遺骨を置けるように工夫して作られた仏壇もありますが、本来、仏壇は信仰の対象となるご本尊を祀るためのものですので、遺骨を置くことについては相応しくないという意見もあります。
また、遺骨の管理を行う人が亡くなってしまうと、その次に引き継ぐ人が困ってしまうかもしれません。また、火災、地震、水害などの自然災害によって紛失する恐れもあります。
後飾り祭壇をそのまま使って安置する
後飾り祭壇は、遺骨を一時的に祀るために設けられる祭壇です。お葬式を終えて火葬した後、忌明けまでの間、遺骨をそこに祀るのです。一般的には、四十九日が過ぎたら解体されるのですが、納骨を希望しない場合はそのまま解体せずに利用される方もいます。
手元供養品を使って遺骨の一部を家に置く
手元供養品とは、自宅で供養するための骨壺や置物、仏具などを指します。一般的なお仏壇の独特な雰囲気は感じられないような、洋風の家にも合うものも多いです。従来のお仏壇は、その見た目から何となく来客にも気を遣うという意見も多いですが、手元供養品ならあまり気を遣うことなく置くこともできるでしょう。
手元供養品で人気が高いのは、遺骨の一部を小さな骨壺に入れて安置するタイプです。残りの遺骨は納骨するケースも珍しくありません。つまり、遺骨は一部を自宅に置きながらも、どこかに納骨することができるのです。
遺骨を複数の場所で埋葬、供養することは、法律でも認められています。これを分骨と呼びます。分骨は、手続きが必要になるため注意も必要ですが、そのような選択肢があることもおぼえておくと良いでしょう。
アクセサリーやペンダントに加工する
遺骨を使ったアクセサリーは、故人をすぐそばに感じたい方に人気です。遺骨を加工して人工のダイヤモンドにしたり、カプセルやケースの中に遺骨を入れてペンダントにしたりと、さまざまな方法があります。
遺骨の自宅安置の注意点
遺骨は、火葬場で骨壺に入れる時は高温で焼かれることにより滅菌状態になっていますが、骨壺の内部に結露が生じたり蓋が開いてカビ菌が入ったりすると、カビが発生する可能性があります。遺骨にカビが生えると、いつか納骨する時にはカビが生えた部分を焼却して取り除かなければなりません。
自宅で安置する際は、遺骨は素手でさわらないこと、湿度の高い場所に置かないことなどが重要なポイントになります。
湿気から守るためには、直射日光の当たらない、暗めで風通しの良い場所、かつ昼夜の気温差が少ない場所が適しています。お風呂場の近くや台所の近くなど、水回りの付近には絶対に置かないようにしましょう。
骨壺は、どうしても蓋と器の間に隙間があります。隙間に水気を含む空気が入り込むと、骨壺の中が徐々に湿気を帯びてしまうのです。湿気に注意していても、気温の変化によって結露が発生することもあります。骨壺の底には吸湿材を入れておき、乾燥状態を維持しましょう。
手元供養という選択肢
お墓をつくらず、遺骨を自宅で供養することを「手元供養」といいます。手元供養を選ぶ人の事情や想いはさまざまですが、以下のような理由によって選ばれることが多いです。
・遺骨をそばに置いて故人をより近く感じていたい
・納骨する心の準備ができない
・お墓がない、お墓をつくることが経済的な事情でできない
・転勤が多くお墓をつくって十分にお参りできない
手元供養は、故人をより近くに感じられるとして、毎日語りかけたりしながら共に暮らしたいという強い想いのある方などに選ばれているようです。
身近な人が亡くなるのは、ご高齢の方ばかりではありません。赤ちゃんや、お子さんなど、親御さんにとっては気持ちの準備ができないうちにお別れを経験する人もいらっしゃいます。
従来の形式にとらわれない考え方
日本では、手元供養はまだ一般的とはいえませんが、それでも特定の信仰を持たない人が多い現代において、1つの選択肢であると受け入れられやすくなっていると言えます。
遺骨をずっと納骨せずにいるのは供養にはならない、縁起が悪いという既成概念もゼロではありません。宗教の考えを重んじ、その宗教にちなんだ供養がベストだと思っている人も当然います。そのため、無条件で誰からも理解されるとは言えないかもしれませんが、新しい供養の形として「それでも良いではないか」と感じる人も増えています。
今は、お墓に納骨して供養するだけでなく、価値観も多様化し供養の形も広がっています。
手元供養に便利なアイテム
手元供養は、お墓をもつ必要がないため、さほど経済的な負担はありません。
ただ、せっかく納骨しないで遺骨を家に置くのなら、きちんと供養ができるように整えてあげたいものです。
手元供養に使えるアイテムを詳しく見てみましょう。
ミニ仏壇
従来の仏壇は、大きすぎたり洋風の家には馴染まなかったりして置き場に困るものも多いです。その反面、ミニ仏壇なら少しのスペースでも置ける、インテリアにも馴染みやすいデザインが多くて便利です。
一見、仏壇には見えないものも多く、リビングにも置きやすいため家族みんながいつでも手を合わせられる点が魅力ではないでしょうか。ミニ仏壇は、手元供養を行う人が増えてきたことで徐々に普及しはじめたアイテムです。これから、ますます置きやすいタイプのものが増えると期待できます。
仏壇に必要な仏具一式の揃ったミニ仏壇セットも販売されており、何を揃えれば良いのか分からないという方には、セットになったものがおすすめです。
ミニ骨壺
遺骨は、通常の骨壺に入れた状態だと、それなりに大きくなります。ミニ骨壺は、手のひらにすっぽり収まるほどの小さな骨壺です。遺骨をひとつの骨壺に入れるのではなく、分骨して離れて暮らす家族がそれぞれ持ち帰る時などに便利です。真鍮や七宝焼といった素材の、おしゃれなデザインも豊富です。
遺骨ペンダント
大切な人をいつも身近に、これからも一緒に歩みたいという気持ちに寄り添ってつくられたのが、遺骨ペンダントです。ペンダントの中央は空洞になっていて、そこに遺骨の小さな欠片を入れることができるようになっています。
遺骨を家に置くことに反対する人の意見とは
少なからず、遺骨を家に置くことに対して好意的にとらえない人もいます。
手元供養を行う人がその必要性を強く感じ大切にされていたとしても、反対の意見を言われたり不吉なことを言われると、あまり良い気分ではありませんよね。
どうして手元供養に反対する人がいるのか、その理由を知っておくと心の負担が少なくなるかもしれません。
縁起が悪いと思われている
仏教では、四十九日で魂が成仏すると考えられているため、遺骨を自宅に置いていても問題はありません。なぜ縁起が悪いのかと聞かれても、答えに困ってしまうでしょう。
しかし、人は縁起が良いか悪いかを気持ちの拠り所にするため、なんとなく一般化した四十九日や百箇日、一周忌での納骨を逃すと「縁起が悪い」と思ってしまうのかもしれません。
違法だと勘違いされている
遺骨はお墓に埋葬するのが当たり前だと思っている人は、いつまでも自宅に遺骨を置くことが違法だと勘違いしている可能性もあります。しかし、納骨の期限は法律上定められておらず、土の中に埋めたりしなければ問題ありません。
遺骨が目に見えることへの抵抗感
遺骨は、お墓よりも故人を近くに感じやすいという人もたくさんいます。その理由から、手元供養を選ぶ人もいますが、そのイメージが強すぎてかえって悲しくなってしまうという人もいます。
故人を近くに感じすぎて、いつまでも強く故人のことを思い出して悲しくなったり、お墓に埋葬してあげた方が良いのではないかという価値観が芽生えたり、その想いや感じ方は人それぞれです。
供養に対しての考え方は人それぞれである
納骨せずに遺骨を家に置くことは、宗教上の観点からも法律的にも問題にはなりません。しかし、供養の理想的な形にはそれぞれ人の考え方があり、もしかすると自宅での供養には反対する人もいるかもしれません。
手元供養すると決めても、反対意見を聞く可能性はあります。反対意見をいわれたからといって、その人が間違っていると決めつけず、色んな意見や考え方があると理解することは大切です。
分骨をする際の手続き・注意点
ミニ骨壺に遺骨を入れて一部だけ自宅で供養したり、家族で遺骨を分けてそれぞれが供養したりする場合に、分骨という方法があります。
分骨は、遺骨を2つ以上の骨壺に分けて供養することを指し、これは正しく行えば法律違反にもなりません。
分骨の目的
ここまででご紹介したように、分骨の目的はいくつかあります。
・手元供養をするため
・離れて暮らす家族がそれぞれ供養するため
・本山納骨をするため
分骨に対してもさまざまな意見があるかもしれませんが、その目的は故人を大切に想う人たちがそれぞれの考え方にしたがって供養できることではないでしょうか。もちろん、一番大切なのは故人の願いや考え方です。故人が生前に、納骨についての希望を伝えていた場合は、それを尊重してあげましょう。
分骨証明書とは
分骨証明書とは、火葬場で発行してもらうことができる証明書です。遺骨を分骨してそれぞれで供養するには、分骨証明書が必要となります。火葬場では、火葬証明書も発行してもらいますが、これとは別のものとなるため注意しましょう。分骨証明書は、分骨先ごとに必要となるため、分骨する数に応じて発行してもらいます。
分骨の手順
分骨は、火葬後すぐに行うケースと、納骨後に行うケースとがあります。早い段階で手元供養をしたいと考えている場合は、火葬場で分骨するとスムーズです。
火葬時には、あらかじめ分骨する数の骨壺を用意しておきます。そして、火葬場で分骨証明書を骨壺の数だけ発行してもらい、それぞれの骨壺に遺骨を納めます。
一度お墓に埋葬した遺骨を取り出して分骨する場合は、その遺骨が埋葬されている墓地等の管理者に連絡をして、その旨を伝え、分骨証明書を発行してもらう必要があります。そして遺骨を取り出す時期を決めます。
分骨の注意点
分骨を行う際は、トラブルを防止するためにもいくつかの注意点を意識して進めましょう。まず何より大切なのは、故人の意思です。生前に、故人が納骨に関して希望を伝えていた場合は、それを叶えてあげるのが重要です。
分骨は、離れて暮らす遺骨の所有者以外の方が希望するケースも多いです。しかし、遺骨の所有者にそれを伝えずに勝手に行ってしまうと、トラブルに発展する可能性があります。また、遺骨の所有者が許可したとしても、その他の親族が同じ理解を示すとは限りません。家族・親族の意見も聞きながら、勝手に進めないことが大切です。
遺骨の最終的な行き先も考えておこう
納骨せずに自宅で供養しつづけるという選択は、人によっては大きな意味をもち、咎められることでもありません。しかし、長期的な視点で考えた時、いずれその遺骨はどこか別の場所へ納骨しなければならなくなる日が来ます。
供養を行う人・遺骨をすぐそばにおき供養したいと願う人が、責任をもってきちんと供養していたとしても、その人もやがて年をとり、健康状態を損ねたり寿命を迎えたりする日がくるでしょう。何も準備をせずにいると、遺骨は行き場をなくしてしまうかもしれません。
自分に何かあった時のために、遺骨の最終的な行き先についてはきちんと決めておくことが大切です。そして、自分でその手配を完了させることが難しい場合は、後を継ぐ人にお願いをするなどして最後まで責任をもつようにしましょう。
納骨せずに家に遺骨を置くという選択肢もある
お墓に遺骨を埋葬せずに自宅で供養を続けることは、宗教的にも法律的にも問題はありません。ただし、お墓に埋葬しないことに対して、あまりよく思わない人もいることは理解しておく必要があります。
そして、その遺骨の最終的な行き先を決めておくことも重要です。手元供養は、故人をより近くに感じられる方法として、最近は広く認められるようになりました。気持ちの整理がつかないなどの理由で、納骨を躊躇ってしまう方は、このような方法もあるということを参考にしてみてはいかがでしょうか。